なぜInkdropはEvernoteより値段が高いのか

拙作のプログラマー向けノートアプリ「Inkdrop」に関する記事です。

TL;DR

Inkdropの値段が高め設定な理由は主に以下の通りです:

  • 安売りはしない
  • 継続性を重視している
  • ちょうどいいスケールを目指している
  • 万人受けを狙っていない
  • 提供価値を信じている

類似サービスとの価格比較

Evernoteはいわゆるフリーミアムです。
つまり軽度の利用なら無料で、使い込むんだ場合に料金が発生するモデル。
Plusが3,100円/年、Premiumが5,200円/年。

これに対してInkdropは$49.90/年。ほぼPremiumと同じ価格。無料プランは無い。
この価格に対しては所々からEvernoteと比べて高いという意見があがっています。

ではInkdropと同様のプログラマー向けのノートアプリはどうか。
Quiverは買いきり形式で、1,200円。
買い切り形式は継続課金よりも敷居が低いから購入しやすい。
だからInkdropよりもはるかに安いと言えます。

しかしながら、この価格設定は間違っていないと思っています。

安売りはしない

価格競争をすれば必ずジリ貧になるからやりません。

Inkdropを使えばその価格以上に生産性が向上すると確信しています。
もとい、そう思ってくれる人に向けて提供しています。
フリーミアムモデルはフリーユーザ達に食いつぶされるから提供しません。
TJ Holowaychukがいみじくもこう言っています:

また、安売りによって人が集まりすぎることもそれはそれで問題です。
マンパワー的に何万人もの顧客をサポートし運営できないからです。

ちょうどいいスケールを目指す

ユーザを沢山囲えないのなら、仲間を集めて体制を整えた上で、あるいは出資を受けて取り組むべきなのでしょうか。
自分の答えは否。
スタートアップ界隈にはびこる “Catch ‘em all” のイデオロギーは必ずしも正しいとは言いがたい。
言い換えればスケール至上主義。ユーザは囲えるだけ囲い込む。Twitter、facebook、Instagram、UberやAirBnBなどのように、何かの代名詞になる。
こういった考え方をどのビジネスにも取り入れるべきとは思いません。
David Heinemeier Hanssonは、ビジネスには「ちょうどいいスケール」があるものだと言っています。
自分のビジネスにとってのちょうどいいスケールとはどれぐらいかを考えた時、それは「数千人」だと考えました。
その人数は、自分が充分に食っていける利益が見込める数だからです。

継続性が重要

ビジネスは継続性が何より重要です。
特にノートアプリは長く使ってもらうことで真価を発揮します。
継続性を考えずユーザをかき集めた結果やっぱりダメでしたというのは、もはやユーザに迷惑をかけるためにやったのと同義です。
多くのユーザを抱えたサービスが潰れる時、以下のような悲劇を招くでしょう。

大事なユーザのデータをこうも無責任には扱えません。

買い切り形式は延々とユーザを増やし続けなければなりません。
そしてメジャーバージョンアップを定期的に別売りして、買い続けてもらう必要があります。
そのための施策を考えて実行するのは、かなりの労力がかかります。

心体的にも金銭的にも、ギリギリのラインを走るのは継続性に欠けます。
真の価値の提供に継続的に集中するためには、それなりの対価が認められて当然です。

すべての人を満足させようとしない

そもそもこのアプリは自分が欲しいと思ったところからスタートしたプロダクトです。
この手のツールには好みが分かれます。そこに答えはありません。
一方で、自分の考え方に共感してくれる人も必ずいます。
だから、その人たちの期待に応えられるように努力すればいいのです。
考え方の違う人たちは多くいます。しかし彼らにも応えようとすると、結局シンプルさは失われ、誰が使うのかよくわからないものが出来上がってしまいます。

価格も同じです。
財布の硬さなんて人それぞれです。
フリーのサービスしか使わない人もいれば、仕事道具には金に糸目をつけない人もいます。
ちなみに、自分は結構ツールには惜しみなくお金を使う方だと思っています。
5000円するTODOアプリ「OmniFocus」も喜んで購入したし、Dropboxにも年間12,000円払っています。
こういう人は当然自分だけではなく、一定数いるはずです。

要するに自分と同じ価値観と金銭感覚の人たちをターゲットにしている、という事です。
「高い!ありえない!」と言う人には、そう言わせておけばいいのです。

自分を信じる

自分は提供しているものの価値を信じています。
なぜなら自分はもうこれ無しでは仕事が出来ないぐらい自分で使い込んでいるからです。
毎日使ってくれている人が既に何人もいることも事実です。

そしてサービスはこれからもよくなっていきます。
ひいては、「この価格でこれは安い!」と言ってもらえるぐらいには完成度を高めたい。
まだまだ始まったばかりのサービスです。
着実に長させて、目標に近づきたい。

投稿者:

Takuya

Digital crafts(man|dog). Love photography. Always making otherwise sleeping. born in 1984.

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